近年,通信ネットワークの分野では次世代高速デジタル通信網の規格である広帯 域ISDN(B-ISDN)の標準化が進められている.これは狭帯域ISDN(N-ISDN)に対して こう呼ばれており,1本の通信回線で音声,文章,映像,データ等の多種多様な 情報を同時に伝送できるマルチメディア性と既存のISDNの100倍の伝送容量を持 ち,ハイビジョン伝送も可能な大容量性または高速性をもった次世代情報インフ ラストラクチャーである.N-ISDNと同様に,B-ISDNではアナログ電話,FAX,デ ジタル回線(パケット網との回線交換),移動体通信といった通信サービスを1つ に統合化された公衆通信回線網で行うというISDNのコンセプトをベースにしてい る.
NTTが推進するB-ISDNは光ファイバー網とSDH,またはATM技術をベースにしたネッ トワークで,155〜622Mbpsという高速インターフェースを提供する.また単に高 速化するだけでなく通信内容に応じて,伝送速度を変化させることができる柔軟 性も,ATMをベースにしたB-ISDNの大きな特徴になっている.
広帯域ISDNで採用されているのATM(Asynchronous Transfer Mode,非同期転送モー ド)交換と呼ばれる交換方式である.ATMは1本の回線を複数の論理回路(チャン ネル)に分割して同時に通信を行う多重化方式の1つで,各チャンネルのデータ を53バイトの固定長データに分割して送受信する方式である.ATMは数値また は文字データだけでなく,画像や映像なども取り扱うことができ,マルチメディ ア時代のネットワークとして注目を集めている.
ATMスイッチを用いたネットワークは,そのほとんどが多段相互結合網 (MIN:Multistage Interconnection Network)に基づいている.MINとは2入力2 出力のATMスイッチを多段式に相互に接続したN入力N出力のネットワークである. しかしネットワークによって通信速度やハードウェアコストなどといったパフォー マンスが異なる.これまでMINにおいてブロードキャストやマルチキャスト, permutationの通信アルゴリズムは研究されてきたが,ハードウェアコスト,通 信遅延に着目して光学多段相互結合網を比較研究されたことがない.よって本研 究では光学オメガ網における通信遅延としてpermutation capabilityを解析的に 求める.またハードウェアコストをネットワークのスイッチ数として評価し,光 学オメガ網と光学べネス
とを比較・検討を行う.これは他のネットワークとの比 較のための基礎データの取得を目的とする.
本論文は5章から構成される.以下に2章以下の内容を簡単に述べる.第2章で は,本研究に使用するネットワークの構造について述べる.第3章では, permutation capabilityの解析手法について述べる.第4章では,解析結果とそ れによって導かれる考察について述べる.最後に第5章において,本研究のまと め及び今後の課題について述べる.