1は,現在対話相手が感じている情緒を認識することには役立つが,今後のこちらの 発話により生起する情緒を予測することができない. 一方2は,こちらの発話により,今後対話相手が置かれる状況を予測することで, 対話相手に生起する情緒も推定できる. 先行研究[5]では,推定した情緒を利用して対話を行うため, 情緒以外の情報も必要であり,情緒生起の原因を把握することが,より有効であった. そのため,先行研究[5]では,2の手法により,特に発話理解による 情緒推定に取り組んでいる. 2の手法で対話相手の情緒を推定するには,対話の言語的情報を根拠として,対話相手の 心的状態を抽出し,情報生起のLLFと照合することによって実現できる. ここで問題となる点は,情緒推定に必要な心的状態の全てが,必ずしも対話に明示される わけではなく,対話の文脈などを考慮して,発話文から間接的に推定する必要がある, という点である. 対話理解における情緒推定では,発話から心的状態を抽出するだけではなく, さらに,対話の文脈の深い解析により, LLFに関する心的状態を推論することが必要になってくる. そこで,人間が対話文から情緒を推定する過程を,注釈で記述したコーパスが作成 された[5].