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基本情緒

Plutchick[1]が提唱した「多因子分析論」を基に,[3]では, 「喜び/悲しみ,好ましい/嫌だ,驚き,期待,怒り,恐れ」という8種類の情緒を, 基本情緒と定義した. そして,情緒の生起過程を,パターン理解における特徴抽出過程の一種と考え, 情緒の生起する原因となる事態の特徴を分類し,階層的なフレームで表現した.

「喜び/悲しみ」の特徴フレームを,図1に示す. たとえば,「喜び/悲しみ」は,最上位の特徴(HLF; Highest Level Feature)に, 「現状態は前状態よりも好都合/不都合である」がある.これを「生理的」と「心理的」 の中位特徴にわける.「心理的」の中位特徴は,さらに「目標実現」と「対人関係」 にわけられる.「目標実現」の中位特徴は,続いて「情報収集」と「計画」,および, 「実行結果」にわけられ,「実行結果」の中位特徴は,「完遂/断念」と「獲得/喪失」, および,「有効/無駄」にわけられる.こうして,これ以上わけられないと考えられた 「獲得/喪失」が,最下位の特徴(LLF; Lowest Level Feature)となる. 「獲得/喪失」という記述は,上位の特徴を継承し,具体的な意味,「目標実現に 必要な物事を努力して手に入れた/なくした」を持っている.

図 1: 「喜び/悲しみ」の特徴フレーム
(喜び/悲しみ(
現状態は前状態よりも好都合/不都合である(
生理的(内的な快/不快; 外的な快/不快);
心理的(
目標実現(
情報収集(思惑どおり/思惑違い;
発見/見落し; 判明/不明);
計画(立案/無計画);
実行結果(完遂/断念; 獲得/喪失;
有効/無駄));
対人関係(
仲間意識(同意/反対; 同感/反感;
協力/非協力; 仲直り/仲たがい);
優劣関係(優越/劣等; 賞賛/非難;
服従/反抗; 保護/見放す; 厚遇/冷遇)));
その他)))

このように,8種類の基本情緒について,123個のLLFと51個の中位特徴,および, 上位特徴,合計174個が定義されている.

情緒生起の特徴は,「目標」,「記憶」,「認識」などの情緒生起の要因で構成される.



平成17年3月23日