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はじめに

従来の対話処理の研究では,飛行機の予約のような手続的業務の対話などの, タスク指向的側面に注目されていた. しかし,福祉エージェントや接客エージェントでは,人間と知能エージェント間の 対話において,手続的に対話を進めるだけではなく,両者の間の親和性が求められる ようになってきた. そのため,近年,対話相手の情緒を推定したり,エージェント自身の情緒を生起させ たり,という対話における情緒的側面が,注目されている. 情緒の生起する過程を機械処理するために,パターン理解的手法が提案されている [5]. これは,情緒生起の要因をパターン理解により抽出することで,情緒生起を処理する ものである. 対話処理においては,情緒の原因を深く理解して推定することも必要である. 人間が,対話文から情緒を推定する過程を注釈で記述したコーパスが作成され, コーパスからコーパス作成者の推論の形跡を解析して,ルールベースが構築された. そして,ルールベースを用いた情緒推定システムが,試作されている. また,[6]では,日本語文の命題情報と様相情報の構造に着目し, 発話行為を認識する対話文文型パターンが作成されている. しかし,対話文から情緒生起の要因を抽出する方法が,問題として残されている.

そこで本研究では,対話文の解析から情緒生起の要因を抽出するための知識ベースを 作成することを,目的とする. そのために,精度の高い情緒注釈付き対話コーパス[7]から,発話文パターン を作成する. ここで,問題として,ひとつの発話文からパターンによって抽出できる情緒生起の 要因と,人間が対話文から情緒を推定する過程を記述したコーパスから抽出できる 情緒生起の要因とには,文脈情報に依存する差分があることがわかる. この差分をなくすために,本研究では,先行する発話文と,現在処理が行われている 発話文との,情緒生起の要因の繋がりに着目し,発話対ルールを作成する.

本論文の構成は,以下の通りである.まず第2章で,研究の背景として,対話処理の ための心的状態に基づく情緒の推定方法について紹介し,第3章で,発話文解析用 の知識ベースの作成について説明する.次に第4章で,作成した発話文解析器について 説明し,第5章で,動作の確認を行う.最後に第6章で,本研究をまとめ,今後の課題 を示す.



平成17年3月23日