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従来の対話処理の研究では,飛行機の予約のような手続的業務の対話などの,
タスク指向的側面に注目されていた.
しかし,福祉エージェントや接客エージェントでは,人間と知能エージェント間の
対話において,手続的に対話を進めるだけではなく,両者の間の親和性が求められる
ようになってきた.
そのため,近年,対話相手の情緒を推定したり,エージェント自身の情緒を生起させたり
,という対話における情緒的側面が,注目されている.
情緒の生起する過程を機械処理するために,パターン理解的手法が提案されている.
これは,「情緒生起の要因」を,パターン理解により抽出することで,情緒生起を
処理するものである.
対話処理においては,対話の意味理解として得られる対話者の心的状態に対して,
情緒生起の要因を解析して,情緒を推定するシステムが試作されており,
その発話文解析器として,杉坂らが,日本語文の命題情報と様相情報の構造に着目し,
発話行為を認識する対話文文型パターンを作成した.
しかし,対話文から,「情緒生起の要因」を抽出することが,問題として残されている.
そこで本研究では,対話文の解析から,情緒生起の要因を抽出するための知識ベースを
作成することを目的とする.
そのために,古塩らの,情緒注釈付き対話コーパスから,525個の発話文パターンを
作成した.
ここでの,ひとつの発話文からパターンによって抽出できる情緒生起の要因と,
人間が対話文から情緒を推定する過程を記述したコーパスから抽出できる情緒生起の
要因とには,文脈情報に依存する差分がある.
この差分をなくすために,本研究では,先行する発話文と,現在処理が行われてる
発話文との情緒生起の要因の繋がりに着目し,34個の発話対ルールを作成した.
作成した発話文パターン辞書,および,発話対ルールベースを用いて構築した発話文
解析器で,クローズドテストを行った.
その結果,コーパス通りの解析結果が得られた.
今後の課題は,作成した発話文解析器の動作効率の向上,および,オープンテストの
実施である.
平成17年3月23日