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おわりに

テキストからの情緒推定というタスクは,文脈情報や世界知識との関連が見逃せ ない.心的過程をトップダウン的に理解することを基本的枠組とする情緒推定の 方式において,文脈情報や世界知識を推定対象と結び付ける手順の確立が課題で ある.その手順を実現するための要点を以下の2点である.

  1. 用言と情緒の対応関係に対して,文脈情報・世界知識との接点を設ける こと
  2. 世界知識の中で「事象間の関係」を見出して(1)の接点を通じて文脈情報 や対象文に結び付けること

本稿では,まず, (1)については[田中 06]で試行された「前提条件」 を使用し, 次に,(2)については[乾 04]の考え方を参考にして,重文・ 複文の用例集から事象間関係をDB化を行い,そして,「前提条件」と「事象間の 関係」の結び付けの手順について例題を用いて検討した.約1,700件の事象間の 関係を参照し,節間キーワード(接続標識)との適合性を検査した.そして,8 件の日記から選択した15件の推定対象文のうち10件について前提条件の成立を確 認できた.結び付けの手順について,こうして1つの解決の道筋が示すことがで きた.

今後の課題は,テキスト中から仮説として前提条件に代入する表現を得る方法を 開発すること,前提条件と事象間関係の対応関係をより詳細に分析することであ る.



平成18年3月20日