本稿では,連鎖確認タイプの前提条件の成立を確認することを,事象間関係の解 析として実行する.そのためには,重文・複文の用例集から適合する表現を検索 する必要がある.
たとえば,ある情緒主が「夏休みの宿題をする」という目標を持ち,「図書館へ
行く」というプランを持つことまでは既知であるとする.情緒推定にはこれらの
関係を確認する必要がある.これは条件〔目標はプランで実現可能〕を確
認することであり,次の構造の重文・複文をある用例集から検索することで実現
できるだろう.
ここで,は節変数である.「ために」など接続詞あるいは接続詞相当表現 (たとえば形式名詞+助詞)を本稿では「節間キーワード」と呼び,節間キーワー ドより前方を「事象1」,後方の節を「事象2」と呼ぶ.また,事象間の関係を, 節間キーワードの語義とみなす.上記の例では「ために」は,が「目標」 を表しが「プラン」を表すので,【目標→プラン】という語義とみなす. 節間キーワードには多義があり「不正をしたために倒産した」のように【行動→ 行動】1という語義もある.
さて,上述の手順の実現には,次の問題がある.
(i)は第4章で述べ,(ii)は第5章で述べる.(iii)は今後の課題とする.(iv)は第 6章で述べる.
前提条件 | 確認のタイプ |
〈生理的〉に関する前提条件 | |
〔五感に関する状態が悪化〕 | 正否確認タイプ |
〔内的/外的な生理状態が改善/悪化〕 | 正否確認タイプ |
〈目標実現〉に関する前提条件 | |
〔情緒主が目標を持つ〕* | 正否確認タイプ |
〔情緒主がプランを持つ〕 | 正否確認タイプ |
〔情緒主が行動を実行〕 | 正否確認タイプ |
〔目標はプランで実現可能〕* | 連鎖確認タイプ |
〔プランの評価が高い/低い〕 | 連鎖確認タイプ |
〔プランは正当/不当〕 | 連鎖確認タイプ |
〔プランには対象が必要〕* | 連鎖確認タイプ |
〔プランに向けて行動を実行〕 | 連鎖確認タイプ |
〔対象の入手は評価が高い/低い〕* | 連鎖確認タイプ |
〔対象は目標の達成に必要〕 | 連鎖確認タイプ |
〔対象は目標の達成を阻害〕 | 連鎖確認タイプ |
〈対人関係〉に関する前提条件 | |
〔集団が存在〕 | 正否確認タイプ |
〔他者が存在〕 | 正否確認タイプ |
〔他者は信頼可能〕 | 連鎖確認タイプ |
〔他者は情緒主rと仲良し/不仲〕 | 連鎖確認タイプ |
〔他者は情緒主より上位/下位〕 | 正否確認タイプ |
〔他者は行動を高く/低く評価〕 | 連鎖確認タイプ |
〔他者は行動を実行〕 | 正否確認タイプ |
全般に関する前提条件 | |
〔行動の評価が非常に高い/高い/低い〕 | 連鎖確認タイプ |
〔行動は情緒主に有益/無益〕 | 連鎖確認タイプ |
〔行動は情緒主の状態を改善/改悪〕 | 連鎖確認タイプ |
〔行動は内的/外的な生理状態を改善〕 | 連鎖確認タイプ |
〔行動は目標に有益/無益〕 | 連鎖確認タイプ |
〔行動は目標の達成を阻害〕 | 連鎖確認タイプ |
〔行動はプランに有益/無益〕 | 連鎖確認タイプ |
〔行動はプランの達成を阻害〕 | 連鎖確認タイプ |