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はじめに

従来の対話処理研究は,飛行機の予約のような手続的業務の対話など,タスク指 向的側面に注目されていた.しかし,福祉エージェントや接客エージェントでは, 人間と知能エージェント間の対話において,手続的に対話を進めるだけでなく, 両者の間の親和[徳久 01]性が求められるようになってきた.そのため,近 年,対話相手の情緒を推定したり,エージェント自身の情緒を生起させるという, 対話における情緒的側面が注目されている.

一方,情緒の生起する過程を機械処理するために,パターン理解的手法が提案さ れている[徳久01].これは,情緒生起の要因をパターン理解により抽出すること で情緒生起を処理するものである.既に,人間が対話文から情緒を推定する過程 を注釈で記述したコーパスが作成され,コーパスからコーパス作成者の推論の形 跡を解析して,ルールベースを構築し,ルールベースを用いた情緒推定システム が試作されている.本研究では,その手法を対話理解に組み込み,対話相手の情 緒を推定することに応用しようとしている.その為にはルールベースの構築が必 要となる.ルールベースの構築において,まず人間が情緒を推定している過程を 調査する必要がある.そのため,人間が対話文から情緒を推定する過程を注釈で 記述したコーパスを作成する.そして,これを解析することにより,コーパスの 作成者の推論の形跡を追ってルールを作成することができる.このように,情緒 推定機構を開発するための言語資源として,情緒注釈付き対話コーパスを蓄積す ることが重要である.しかし,情緒注釈付き対話コーパスは体系が複雑なため, 精度の高いコーパスの作成には熟練を要することが問題である.

そこで本研究の目的は,コーパス作成者の熟練度向上のため,熟練者でない者が 作成したコーパスの誤り傾向を分析し,精度の高いコーパスを効率的に作成する ためのコーパス作成手順を提案することである.具体的には,コーパス作成過程 に,ルールベースによる推論結果を比較する作業工程を設け,相違のある注釈に ついて熟練者による評価を入れる.本研究では,この手順で試作した30件のコー パスについて,比較工程から抽出したコーパスの誤りを分析し,この手順の妥当 性を示す.



平成16年4月17日