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対話理解により相手の情緒を推定する機構を開発している.情緒推定システムは
対話解析器[杉坂 03]および,ルールベース[有田 03]で構成されてい
る.ルールベースを構築するには,発話者の情緒を推定する過程を注
釈によって記述した対話コーパスが必要である.
しかし,注釈の体系が複雑なコーパスを高い精度で作成するには熟練を要するた
め,付与作業のできる者が限られていることが問題である.
そこで,本研究ではコーパス作成者の熟練度向上のため,熟練者でない者が作成
したコーパスの誤り傾向の分析を行う.また,精度の高いコーパスを効率的に作
成するためのコーパスの作成手順を提案し,その妥当性を示す.
作成したコーパスの誤りを人手により判別するにはコストがかかる.そこで,作
成したコーパスとルールベースによる自動推論の推論過程の相違箇所を判定すれ
ば,誤り箇所の検出コストを低くできると考え,次の手順でコーパスを作成する
ことを提案する.
- 情緒注釈付き対話コーパスの試作
- 試作したコーパスと情緒推定システムの推論過程の比較
- 熟練者による(2)の相異箇所の評価
- コーパスの校正
- (2)から(4)を繰り返す
(1)では,30件のコーパスを作成した.(2)では,[有田 03]による評価基準を
用い,コーパスと情緒推定システムとの比較を行い,推定相違箇所の抽出を行っ
た.(3)では,推定相違箇所からコーパスによる誤りか,ルールベースによる誤
りか判別し,それを熟練者が正しく判別されているか評価した.さらに,作業者
の誤りの傾向を考察した.(4)では,コーパスの誤りに対し,注釈の付与や削除,
変更を行いコーパスを校正した.なお,校正作業は熟練者による直接の修正は行
わなかった.さらに,(2)と(3)の工程を行い,校正後のコーパスの誤りを分析し
た.その結果,コーパスの校正により作業者の誤りを削減できた.以上により,
本研究で提案するコーパス作成手順の有効性を確認した.
平成16年4月17日