従来の複文の分類方法として,底の名詞(英語における先行詞)と修飾部の格関係 の種類に応じて複文を分類する方法[1]や,底の名詞が連体節内で格関係を 有するか否かに着目して分類を行う方法[2]がある.しかし,いずれの方法 も,計算機で判断するのは困難となっていた,
昨年の研究で,表[3]は,底の名詞の意味属性に着目して,底の名詞の意味 属性が「具体」配下の場合を「内の関係」,底の名詞の意味属性が「抽象」配下 の場合を「外の関係」と考え,「内と外の関係」を判断した.しかし,「底の名 詞の意味属性」だけでは,正解率がそれぞれ内の関係で94.9%,外の関係で 63.8%であり,外の関係の正解率が,内の関係の正解率に比べ低い結果となった.
そこで本稿では,日本語複文の底の名詞の意味属性,修飾部の述部の結合価パター ンに着目することによって,「内と外の関係」の計算機による判断規則を作成し, 精度の向上を目指す.その結果,クローズドテストにおいては,「内の関係」で 82.2%,「外の関係」で83.4&の正解率が得られた.また,オープンテストにお いては,「内の関係」で84.9%,「外の関係」で71.1%の正解率が得られ,判断 規則の有効性が示された.
以下,第2章では,内と外の関係,第3章では,日本語語彙大系,第4章では,内 と外の関係の判断方法,第5章では,本手法の判断規則,第6章では,実験結果, 第7章では,正解と失敗の例,第8章では,考察,第9章では,今回の結論を 述べる.