日本語複文(埋め込み文)は,英語に翻訳する場合,関係節,同格節, 準動詞,前置詞句など様々な表現に訳されることが多い.埋め込み文を正しく訳 し分けることは,日英機械翻訳の重要な課題の一つとなっている.その課題の1 つが「内と外の関係」である.
そこで本稿では,動詞及び節が底の名詞(英語では先行詞に相当する)を修飾する, 連体節を含む文を取り上げ,「底の名詞の意味属性」及び「修飾部の述部の結合 価パターン」を考慮することによって,「内と外の関係」を計算機で判断する方 法を提案し,その精度を評価した.
その判断規則の有効性を,アンカー和英辞典(約46000文) より抽出した複文200 文を用いて検証した結果,クローズドテストにおいて内の関係で82.2%,外の関 係で83.4%の正解率を得た.さらに,アンカー和英辞典より複文400文を抽出し てオープンテストを行った結果,内の関係で84.9%,外の関係で71.1%の正解率 を得た.
この結果より,底の名詞の意味属性および修飾部の述部の結合価パターンを考 慮した内と外の関係の判断規則の有効性が示された.