音声対話システムは,万人が計算機を自由に使用するためのインターフェースと して,実現が期待されている。従来,音声対話システムは自由な発話を対象に研 究されてきたが,発話の発散による誤認識などの問題が多く存在し,実用化には まだ多くの時間が必要だと思われる。
本研究は,実用化を重視する立場から,事前情報(インストラクション)を与える ことで,ユーザの発話を制約する手法を提案し,インストラクションにどの程度 の制約効果があるかを調査した。音楽CDの購入をシミュレートした音声対話シス テムを構築し,インストラクション有り,無しの2つのグループに分割した被験 者に音声対話システムの利用をしてもらい,対話データを収集して発話単語種類, 発話文種類,発話単語エントロピーについて比較した。
結果,インストラクションを与えることで発話単語種類が約1/3に減少し,発話 文種類が約1/2に減少した。そして,単語エントロピーは1.85ビットの減少が確 認された。 今回の結果から、対話システムにおける事前情報のガイドが、ユー ザの発話に十分な制約を与えることが認められた。