名詞句、特に名詞句と名詞句を「の」で結んだ「XのY」という名詞句は、日本語 でよく現れる表現である。この名詞句では名詞句同士が様々な意味関係を結ぶた め意味解析が難しい。また英語への翻訳の場合、英語との対応が一対一ではない ため翻訳規則を定式化することが難しい。従来、「の」を含む名詞句の日英翻訳 に対する用例ベースアプローチ[3]が提案されている。この研究では、 一般的に行なわれている名詞同士の意味距離を用いて用例を選択する方法の他に、 名詞句と主部や述部との関係、並列関係などを手がかりにして翻訳パターンを決 定する方法が提案されている。[3]によると、中間言語や中間表現を 用いて機械翻訳を行なう場合、翻訳の対象となる言語を曖昧さのない構造で表す 必要がある。しかし自然言語の正確として、意味を正確に記述することが難しい と書いてある。
さらに、抽象名詞「こと」の構造と意味の解析[4]の研究によると、 自然言語処理の最大の問題点は、表現の構造と意味に関する解釈の多様性である。 その中でも、単語の意味的曖昧性の解消は、対象となる単語の持つ概念が抽象的 であるほど困難である。
上記に述べた研究は、名詞句のある構造に対象する研究である。名詞句の構造は多 く存在することが分かるが、如何の名詞句の構造があるかは従来まだ調べられてい ない。 本研究では、名詞句は「の」という格助詞を含む構造以外は、ほかの格助詞 を含む構造、また連体詞、形容詞、形容動詞などを含む名詞句の表現の存在が確認さ れた。そして、これらの名詞句の様々な表現を抽出することは、上記のような研 究に、あるいは、英語への翻訳規則の作成に有効である。