Game Review

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タイトル 総合点 シナリオ 演出 操作性 戦略性 バランス やり込み 熱中度 完成度
火星物語
10

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火星物語(人形劇RPG、アスキー、PlayStation)


シナリオ:9点

全30話のショートエピソード構成で、3つの時代を上手くリンクさせて謎を 少しずつ解いて行く。そのテンポとペースが絶妙。各話それぞれに「ヤマ」が設けて あり、退屈する事がない。先読みのできてしまうシナリオだが、それがマイナスには なっていない。プレーヤーの予測を越えない進行というものは、言い替えれば安心 して見ていられるという事である。心の準備ができていればこそ、ベタなシーン(仲間 の死とか)を受け入れやすくなるのだ。それこそが、広井王子作品が追い続けてきた 「お約束の美学」なのだ!「火星」はその完成形と言っていいだろう。


演出:10点

人形劇を意識したポリゴン...それは現在のリアル路線とは正反対のコンセプトに よって設計されたのだが、その評判はあまりかんばかしい物ではない。見ためで損を する部分があまりにも大きいからだ。一見すると、ヘボいポリゴンにしか見えないの だから無理もない話ではある。しかし、ゲームを実際にプレーした人は、あのヘボい ポリゴンは演出上必要不可欠の物であると実感するだろう。
人形劇を志向した演出の利点とは、プレーヤーに想像の余地を残せることである。 顔がリアルでない方が感情移入もしやすい。そして、実力派声優の感情豊かな演技が プレーヤーに、今画面上に見えている映像以上の物を感じさせる事ができる。そうする 事で、演出家はもう一歩前へプレーヤーを引き込む事ができるのだ。 この夢の声優陣は「人脈王」広井王子だからこそできたと言える。
ただ、退屈させないために各話毎にドッカンドッカン山を作っているため、ラスト での特別な盛り上がりいん欠けた感はいなめない。


操作性:6点

移動画面で少々モッサリとした所がある。目的地にたどりつくまでに、全ての移動 をノーカットでやらなければならないのが面倒である。何度も通ったルートを通るのは 実に面倒だった。読み込みスピードにも不満あり。戦闘開始前の間が長すぎ。戦闘中の 攻撃目標ロスト時の硬直時間が長すぎ。自動追尾機能が欲しかった。


戦略性:6点

「アドリブバトル」という戦闘が楽しい。そこいらに転がっている岩を投げつけ たり、柱を倒して敵にぶつけたり、大砲をブッ放したりできる。しかし、マップごとに オブジェの種類が限られているため、すぐに単調な戦闘になってしまう。
また、話によって戦闘回数の多少が激しすぎる。


バランス:8点

1話約40分。一日に2話分も進めたら満足できてしまえてテンポが良い。難易度も ゆるめだし、取り忘れたアイテムを話の終わりに届けてくれるというのも親切設計。 RPG嫌いな人、忙しい大人に自信を持ってお薦めできる一品である。
しかし、スゴロク風移動モードでの、到着制限時間がやたらと厳しく、ストレスが 溜まってしまう。これさえなければ...


やり込み:3点

基本的に一度きりのゲームである。しかし、それでいいのだ。長編RPG...特に、 シナリオで勝負しているようなゲームという物は、一度のプレーで強烈な印象を残せる かどうかが勝負であり、何度かやらないと分からないような難解なシナリオや、本筋から 外れた無駄なやり込み要素というものは二の次に考えなければならない。
システムRPGとシナリオRPGの境界線が曖昧になっている昨今、「火星」は非常に 潔いRPGであると言えよう。


熱中度:7点

感情移入するような物ではなく、「楽しく演劇を見る」タイプのゲームである。 手軽に、いつでもどこでも誰にでも、平均的普遍的に楽しませてくれる。しかし、 物足りなさも感じてしまう。主人公に魅力がなさすぎるのも難。


完成度:9点

ラジオから生まれた「ライブ感覚RPG」である「火星」は、広井王子ワールドの 集大成的な存在であると思う。広井ワールドの楽しさを一番引き出している作品で ある。しかし、驚くほど売れ行きは悪かった。
広井ネームの胡散臭さ...というか、マニアック気風というものが強すぎる。 そして、そういう層にしか売ろうとしない広告戦略の結果...10万本にも届かない という大コケソフトとなってしまった。
これは大変もったいない話である。私は「火星」のラジオは一度も聞いた事は なかったが、自然にゲームを楽しむ事ができた。むしろマニアにとっては物足りない ゲームかも知れない。この良作が馬群に埋もれない事を切に願います。

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