ファイナルファンタジーVIII(RPG、スクウェア、PlayStation)
シナリオ:10点
満点こそ付けてはいるが、これは完璧であるどうかではなく「シナリオの満足度」
で採点したものであり、狭義のシナリオの評価ではない事をまず断っておく必要がある
だろう。とにかく今作のシナリオはアラ探しを始めたらきりがないというほど整合性が
取れていない。「7」の時のように壮大なテーマをブチあげているわけでもなく、愛
というありふれたテーマにゲンナリしてしまった人も多い事だろう。
しかし、それでも私は今作のシナリオを高く評価したい。なぜなら、今作のシナリ
オはRPGのシナリオの概念を変える可能性を示してくれたからである。従来のRPGのシナ
リオはキャラクターに依存している物がほとんどだった。この手法にはキャラクターの
数を調節するだけでいくらでもシナリオを水増しする事ができるが、反面キャラクター
の魅力の拡散や展開の冗長化という問題があった。「8」はシナリオの多様性を放棄し
、シナリオの指向性を強化しようとしたのです。スコールとりノア二人だけにピントを
絞り込む事を演出上だけではなくシナリオ本体でも実践してみせたのだ。
それがいいか悪いかは問題ではない。こと「8」に関しては、他のRPGやFF過去作と
比較する事はナンセンスです。もはや目指している面白さの種類が昔とは明らかに違う
次元に突入しているのですから。「8」は真の意味で大衆的なシナリオです。大衆作の
シナリオとは語るにあらず。シナリオ単体で語るなんてもったいない事なんですよ。
演出:10点
FF8を語る上で、やはりムービーは外せないだろう。プレステの表現能力を限界まで
突き詰めた超美麗ムービーの存在感は圧倒的である。有無をも言わせぬインパクトは、
えてして本体のバランスを崩壊させてしまいがちである。CMでバンバンCGが流されたた
め、FF8を「ムービー」がメインのゲームであると思ってしまった人も多い事だろう。
しかし、ムービーは演出効果の一部でしかなく、それをわきまえてゲームに臨まなけれ
ば、あなたは大変な勘違いをしてしまうことになる。それは、比較の対象を映画にして
しまう事だ。
FF8は「演出手法」に映画的要素を採り入れたのではなく、「製作手法」に映画的
要素を採り入れたのだと私は認識している。ゲーム演出の根幹を成す部分はそれほど変
わってはいない。ただ演出がムービーに振り回されている印象が強いからそう思って
しまうだけだ。
不満が無いわけではない。翻訳を前提としたような平易すぎる日本語には小首を傾
げてしまう。日本語独特の軽妙な言い回しが感じられなかった。TVドラマのような言い
回しがおしゃれだと思っているのだろうか? 演出家の神経を疑ってしまう。
しかしそんなマイナスポイントを差し引いても満点を付けざるを得ない。それほどまで
にムービーの存在感は圧倒的だった。良い悪いは別にしてね。
操作性:8点
方向キーだけでダッシュがかかる操作方法に最初は戸惑ったが、慣れれば快適に。
しかし、移動可能範囲の見にくさは相変わらずである。本当につまらない事で迷ったり
してしまう。一番むかついたのは、ヒントが間違っていたところがあった事。話題にも
なったバグ騒動については本当に些細なことである。あんなバグがあれだけ話題になる
あたり、FFがいかにビックになったのかを実感してしまう。
読み込みの早さについては、ムービーへの移行速度は素晴らしいが、通常画面への
復帰速度はあまり褒められた物ではない。おそらくこれがプレステの限界なのだろうけ
ど。ミニゲームの唐突さと操作と判定の難しさもなんとかして欲しいものだ。あんな所
でつまづいたらストーリーが白けてしまう。
戦略性:10点
RPG界に革命を巻起こした「ジャンクションシステム」は大変な賛否両論を巻起こし
たシステムである。レベルの概念を崩壊させたこのシステムは、従来の牧歌的経験値稼
ぎというぬるま湯にドップリ浸かっていたプレーヤーの多くに拒否反応を引き起こした
。逆に、このシステムの面白さを掴む事ができた人は、今までに味わった事の無い新鮮
な感覚で「8」をプレーすることができた。このシステムを理解する事によって、その
人達にとって「8」はムービーの凄いゲームではなく、システム面で凄かったゲームで
あったと記憶する事になる。
いままでRPGのやり込みプレーを馬鹿にしていた私ですが、「8」のシステムには
「誰にでもやり込みができるのではないか」と思わせる魅力がある。バランスがとれて
いないとかいう意見は、このシステムの魅力を理解できなかった残念な方々の弱音に
すぎない。バランスよりも刺激的な魅力を!
「8」の魅力はシステム面にこそあるのです!!
バランス:10点
この点には疑問を持つ人が多いと思いますが、こと「8」におけるバランスとは、
10点か0点かしかあり得ないのです。前述のシステムを理解できた人にとっては、
バランスなんて無意味であり、バランスが無い事こそが10点満点なのであり、逆は
いわずもがな。
やり込み:10点
一般人の眠っていた「やり込み魂」を刺激する、自由度の高いシステムに加え、
ストーリー本筋を見失ってしまう「カードバトル」は病み付きである。こういうやり込
み要素はストーリー面では蛇足でしかないのだが、300万人オーバーのエンターテイ
メントにはあらゆる種類の面白さを詰め込まなくてはならない。おまけにしてはいい
デキだと思う。そういうゴテゴテしたところが「FFらしさ」なのかも知れない。
熱中度:10点
ストーリー面でもシステム面でもいろいろ物議を醸し出した「8」であるが、40
時間以上確実に熱中させてくれたのだから、やはりゲームとして面白いとしか言えない
。みんな文句を言いながらもしっかりプレーしている。惜しむらくは、「8」を単なる
「7」の延長線上のゲームであり単なるはやり物だと知ったかぶりして、実際にプレー
しない人間が多い事である。しかも、熟練のゲームプレーヤーにその種の人間が多い事
が残念でならない。2年に一度の祭典。同じ阿呆なら踊らにゃ損!
完成度:10点
スクウェアがプレステでやりたかった事は「8」においてほぼ実現されたと言って
いいだろう。その方向性が正しいかどうかは歴史が決める事であり、時代の当事者であ
る我々には正確な判断などできない。我々にできるのは与えられた新しさの中に面白さ
の種類を見い出す事である。FFはこれからも我々の予測を上回るスピードで進化し続け
るだろう。舞台を次世代プレステに移して。
2001年、「ファイナルファンタジー9」、今度はどんな驚きを私たちに見せてくれる
のだろうか?