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結論

「形容詞+並列型名詞句」(形容詞+名詞A+と/や+名詞B)に対して、
1.
「形容詞+名詞B」の共起の有無
2.
抽象度の差
3.
「こと」「もの」
4.
意味距離の差
以上4つの点に着目し、次の形容詞の係り先決定法を提案した。

1.
共起の有無
「形容詞+名詞B」が共起しない場合はA係りとする。
2.
抽象度
名詞Bの抽象度が名詞Aの抽象度より高い場合、A&B係りとする。
3.
「こと」「もの」
名詞Aが「こと」「もの」である場合はA係り、
名詞Bが「こと」「もの」である場合はA&B係りとする。
4.
意味距離の差
名詞Aと名詞Bとの意味距離が閾値よりも大きい場合にはA係り、
小さい場合にはA&B係りとする。
以上のルールを新聞記事1年分より抽出された293件に適用したところ、次の結果を得た。


 
表 4: ルールごとの評価(単位:%)
  カバー率 適合率
1;共起の有無 5.1 100
2;抽象度の差 61.8 94.5
3;「こと」「もの」 0.34 100

また適合率の高いルール1、2の順で適用したところ、次の結果を得た。


 
表 5: 総合評価(単位:%)
  カバー率 正解率
総合評価 100 88.4

これは全てをA&B係りとする場合より、約5%の精度向上を得た。 また、今後の課題としては、次の点が考えられる。

1.
形容詞の分類
考察で述べた形容詞の分類に加え、次の視点による分類が必要と考えられる。
(a)
抽象度
例えば、形容詞「膨大な」は、後述の名詞に「数、量」などの抽象度の高い上位概念語が来るが、形容詞の種類によって後述の名詞の抽象度に影響がある。
(b)
共起の難易
例えば、形容詞「美しい」は一般的に、「男性」よりも「女性」の修飾に用いられ、 またあまりに幼い「少女」に対しては用いられにくい。この様に形容詞の中には、 修飾しやすい名詞や、修飾しにくい名詞が社会通念上あらかじめ決まっている場合がある。
2.
名詞の概念の考慮
名詞には、その本来の意味に加えて、人間が日常生活などで得る様々な情報をも内包している。 それらの様々な概念を名詞に付与することが必要と考えられる。 次に例を示す。

19#19 (9)

人間の通念において 「先生は一般的に生徒よりも年長」であり、「フローリングは一般的に白くない」。 これらの通念は人が形容詞の係り先を決定する際にも多分に関係しており、考慮する必要があると考えられる。


MatobaKazuyuki 平成11年4月16日