従来の共起頻度を用いた係り受け解析では、「AのBのC」を「AのB」と「AのC」 の2つに分類する。しかし、この方法は意味論的にも問題がある。要素合成法の 考え方に従えば、表現の意味はそれを構成する部品の意味に還元されるが、言語 表現では、必ずしもこの原理が成り立つとは言えず、表現の構造と意味の関係を 考えなければならない場合も多い。例えば、下記の名詞句では、2つの名詞句に 分離することは適切でなく、3つの名詞の組とその出現順序に依存して意味が決 定される。
例)「盗人のなれの果て」
「私の気のせい」
このような場合は、表現を分解せず、ひとまとまりのものとして扱うことが必要 である。従って、「の」型名詞句の名詞間の係り受け関係を決定する場合も、表 現を構成要素に分解してよい場合と分解できない場合に分けて考えることが重要 である。