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はじめに


日本語の構文解析において述語間の係り受け関係の曖昧さは長文解析の精度を低 下させる大きな原因となっている。日本語では述語の連結により長文になる傾向 があるから、用言の相互関係を知ることが構文解析全体の精度の向上につながる と期待できる。用言の相互関係に関して、南は従属節を3分類し、分類間の制約 に関する性質を明らかにした[1],[2]が、分類には意味的 分析を必要とするなど、構文解析に直接利用することは困難であった。これに対 して、白井らは表層的な情報から計算機で処理しやすいよう長単位で従属節末尾 を再分類するとともに、読点、述語の種類による係り受けの規則等を加味して、 述語句を細分類する方法を提案した[3]。この方法によって、係り受 け解析の精度は飛躍的に向上した。しかし、述節に含まれる助動詞の役割が必ず しもに十分考慮されていない。

従属節間の係り受け関係には話し手の認識から表現までの過程が階層として現れ ることが指摘されている。ここで話し手の認識が直接的に現れるのは助動詞であ るため、その有無と用法は従属節間の階層構造を把握する上で有効と期待される。 日本語文は主体的表現が客体的表現を包み込む入れ子構造を持つ。助動詞は用言 に接続して対象への話し手の判断を示す機能を持つことから、述部で用いられた 助動詞によって、述語間の階層構造がより明確になると期待できる。 また、春野らは決定木を使った係り受け解析において、文節語尾の形、助動詞を 含む文節タイプ、句読点の有無、他8種の属性に関する分析を行った [4]。その結果、係り受け関係にあるうち前方の文節のタイプの効果が 高く、従属節の係り受け関係を決定するうえも重要な役割を果たすのは文節語尾 と助動詞である可能性が高いと指摘されている。

そこで本論文では、従来の日英機械翻訳システムALT-J/E方式で係り先を決定し たのち、助動詞の有無によって係り先を修正することで、助動詞の効果を検証す る。


asano
2000-03-15